俳句本

「祖父が亡くなったので 部屋の中のもの全て 処分してほしいのですが」

と 電話口で 少し強い口調でお話しされる姪っ子さん

さっそく横浜までお見積りに伺いました

待っていたのは姪っ子さんお一人

「何も片付けしていません」と言いながら

早足でお部屋を案内してくれました

お部屋の片づけいっさいを任されたそうです

「親も私も 相続放棄を宣言したんです」とおっしゃっていました

何かいろいろな家庭事情がおありのようでした

2DKのマンションで お一人暮らしだった故人様

姪っ子さん「もう ほんとうに荷物が多くてすみません」とおっしゃいましたが

男性一人暮らしなのに とても整理されたお部屋でした

レコードがたくさんあり

趣味を楽しんでいたようでした

押し入れや本棚には たくさんの俳句本や文芸春秋

私は押入れの前に座り その本をしばらく眺めた後

「 はぁ これはこれは おじい様 とても勉強家だったのですね 」

そう言うと 姪っ子さんもようやく椅子に腰かけ

俳句本に手を伸ばし ぱらぱらとめくり

しばらく黙っておられました

おじい様が亡くなって目まぐるしく時間が過ぎていったことでしょう

そう きっと 一息もつく暇なく・・・

前に引っ越しの時 運送屋さんが家財を落として破損してしまったので

信頼のある業者を紹介してほしいと 葬儀社さんに頼んだとお話ししてくれました

「責任も持って おじい様のご遺品 扱わせていただきます」

そう言った翌日 ご依頼決定のご連絡をいただきました

作業当日 全てを運び出し 空になった押入れを眺めながら

故人様 姪っ子様 そのご両親が いつか きっといつの日か

一つになれることを 心から願ってやみませんでした

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