【挿入エピソード 0歳の初着】

これ 私事ですが 先だって実家に行きました

母が私に これ お前が 0歳の時に着て

お参りした  初着だよ

 

これをいつまでも自分が持っていてもしょうがないので

お前に戻すよ と言われ また私に寄こしました

 

今さら 私 それをもらっても しょうがないし

私に男の子がさずかったら これを着させるんだけれど

もう そんな時代は とうに過ぎてしまったし…

 

なんてことを思っていたら

 

そのときに母が あ?!これは比翼だと言ったんです

 

「ひよく」っておわかりですか?

架空の鳥で比翼ってのがあります

頭が2ツで胴がひとつの鳥です

比翼連理の契りなんて言葉があります

これは夫婦なかむつまじい 例えです

 

この初着 すその方が2枚に縫ってあり

胴の部分の身ごろが 1枚の縫方なんですね

 

そしたら母がポツンと ああ私はもうこの

比翼の縫い方は 分らなくなっちゃったと

つぶやいていました

 

この時 私 頭にひらめきました

 

よし これは 私が死んだ時

白装束の上に はおって 頂こうと思いました

 

私はこの瞬間に決めました

私が死んだら 棺の中に横たう私に

この世に生まれた時に はおったこの初着を

この世を去る時に またはおらして頂き

旅立ちたい と思いました

 

かたわらには家族の写真と花があれば

私はうれしいと思いました

この初着は私の宝です

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